独立開業するとサラリーマン時代よりも多くの収入を得られる可能性がありますが、起業した人が必ずしも全員ビジネスを継続できるわけではありません。統計データによると、個人事業や法人が設立された後の数年以内で、 一定の割合の人が廃業しているのが現実です。そこで今回は、起業後に廃業せずに生き残るためのポイントをお伝えします。
統計からみる起業後の廃業率と生き残るためのポイント
統計データからみる起業5年以内の廃業率
まずは中小企業庁が公開している起業後の廃業率に関するデータを確認していきましょう。 今回ご紹介する統計データは、2006年版中小企業白書にもとづいています。
このデータでは、新たに起業された個人事業や法人がその後1年ごとに生き残っている割合を確認可能です。
起業1年で個人事業主は廃業率37.7%、法人は廃業率20.4%
まず起業から1年での、廃業率について確認していきましょう。個人事業主に関するデータを参考にすると、 起業から1年経過後に存続している事業の割合は 62.3%と記載されています。この数字は存続している事業者の割合のため、廃業率は100%から62.3% を差し引いた37.7%です。
同様に新たに設立された法人が、1年経過後に存続している割合は 79.6%と記載されています。つまり廃業してしまった企業の割合は100%から79.6%を引いた20.4%です。
個人事業主として開業するためには資本金や登記簿登録が不要でハードルが低い分、事業計画が甘いことなどが原因で廃業する確率が高くなっていると考えられます。一方で法人の場合の廃業率は企業から1年後で約2割となっており、個人事業主の廃業率と比べると低いのが特徴です。しかし100%が生存しているわけではないため、油断は禁物と言えます。
起業から3年では個人事業主の52.4%、法人の37.2%が廃業
次に起業から3年経過した時の廃業率について確認していきましょう。今回参照している中小企業庁の統計データでは、起業から3年後の廃業率や生存率が直接記載されているわけではありません。しかしグラフには起業してから1年ごとに集計されたデータが記載されているため、その数値をもとに算出可能です。
個人事業者の場合、統計データでは起業から1年経過した時に生存しているのは62.3%で、その次の2年目にも生存しているのは、1年間生き残った事業主の内の 75.9%と記載されています。さらに3年目に生存しているのは、2年間生き残った事業主の内の79.5%です。 このデータから、起業した個人事業主全体に占める3年後まで生き残った事業の割合は、以下のように計算できます。
【起業から3年後までに生き残った個人事業主の割合】
=100%(起業した個人事業主全体)×62.3%(1年後に生存した割合)×75.9%(1年後から2年後まで生存した割合)×79.5%(2年後から3年後まで生存した割合) ≒ 約37.6%
つまり起業した個人事業主の内、3年後まで生存しているのは全体の37.6%ということです。逆に言えば、100%(全体)から37.6%(生存率)を引いた62.4%は、3年後までに廃業しているという計算になります。
また統計データにもとづいて、新規に設立された法人の生存率および廃業率を計算すると、以下の通りです。
【起業から3年後までに生き残った法人の割合】
=100%(起業された法人全体)×79.6%(1年後に生存した割合)×87.6%(1年後から2年後まで生存した割合)×90.0%(2年後から3年後まで生存した割合) ≒ 約62.8%
起業された法人の内3年後まで生存しているのは全体の62.8%で、100%(全体)から62.8%(生存率)を引いた37.2%は、3年後までに廃業しているという結果です。
5年目での廃業率は個人事業で74.4%、法人で47.3%
創業から5年経過した時点での廃業率についても、統計データにもとづいて同様に計算してみましょう。
【起業から5年後までに生き残った個人事業主の割合】
=100%(起業した個人事業主全体)×62.3%(1年後に生存した割合)×75.9%(1年後から2年後まで生存した割合)×79.5%(2年後から3年後まで生存した割合)×81.2%(3年後から4年後まで生存した割合)×83.8%(4年後から5年後まで生存した割合)≒ 約25.6%
起業した個人事業主の内5年後まで生存しているのは全体の25.6%です。廃業率は100%(全体)から25.6%(生存率)を引いた74.4%となります。
法人の場合についても計算してみます。
【起業から5年後までに生き残った法人の割合】
=100%(起業された法人全体)×79.6%(1年後に生存した割合)×87.6%(1年後から2年後まで生存した割合)×90.0%(2年後から3年後まで生存した割合)×91.0%(3年後から4年後まで生存した割合)×92.2%(4年後から5年後まで生存した割合) ≒ 約52.7%
起業された法人の内5年後まで生存しているのは全体の52.7%で、100%(全体)から52.7%(生存率)を引いた47.3%の会社が、5年後までに廃業しているという結果でした。
つまり大まかにまとめた場合、起業してから5年後までにおよそ7割強の個人事業が廃業し、約半分の会社が廃業してしまうという統計データとなっています。
ただしこの中には、個人事業主から法人になったというケースもあれば、反対に法人から個人事業所に戻ったというケースも含まれているため一概にビジネスに失敗したとは言えません。統計データから読み取れることは、起業した当初の形のまま5年以上ビジネスを続けられる可能性は決して高くないということです。そのため慎重に起業する必要があります。
起業後に廃業してしまう主な原因
以下に、起業後に廃業してしまう主な原因について解説します。廃業してしまうケースにはさまざまなパターンがありますか、主な要素はやはり資金面での問題が多いです。
先を考えず投資してしまった
投資というものは様々ありますが、店舗を増やす投資や、技術を身につけるために投資、商品を転売するための投資や従業員を多く採用する投資など、先を見据えずに投資をすると投資に見合う売上が取れず失敗してしまうことがあります。例えば、流行っている商品を仕入れることができ、起業時に複数の店舗を作り、 広告をかけて1年は売り上げが伸びたが流行が去り、各店舗で販売が厳しく収入が減り、店舗や従業員の給料が払えずに 借金を抱えて倒産。そんなケースがあります。
想定できるリスクへの備えが不足していた
事業計画書を作成する際に、市場環境の変化や競合の動き、業界特有のリスクなどを十分に考慮せず、廃業につながってしまうことがあります。例えば、原材料価格の高騰や人材の採用難、季節による需要のブレなどへの対策が不十分で、本来であれば想定できたことも想定外の事態となり、経営が行き詰まってしまうケースです。時流を完璧に読み切るのは難しいですが、入念に市場調査とリスク分析を行っておき、事業計画のパターンをいくつか作成しておくことで回避できる確率は上げられます。
運転資金の見通しが不十分だった
資金繰りの悪化による倒産は、よくニュースでも耳にされているかと思います。売掛金の回収遅れや在庫の過剰保有などで、運転資金に問題が出るケースです。売上が立つ見込みが楽観的だったり、資金が不十分だったりすると、事業継続は難しくなりやすいです。開業時には少なくとも半年から1年分の運転資金を確保しておくことが望ましいでしょう。
事業の拡大に失敗してしまった
反対に事業計画通りにうまくいった場合でも、事業の拡大に失敗してしまうと廃業に追い込まれる危険性があるため注意しましょう。急な人件費や家賃の増大などで固定費が増えると、業績が悪化した時にすぐに廃業してしまうリスクが高まります。
大手の参入や体調不良など想定外の事態が発生した
起業した当初には想像もしていなかったような大手の競合が突然参入してきた場合や、ビジネスに関する大幅な法改正が行われた場合、あるいは経営者の体調不良や事故といった不測の事態も廃業リスクの1つです。
起業後に廃業してしまわないためのポイント
最後に起業後に廃業してしまわないためのポイントについて解説します。事業を継続させるための主な注意点は以下のようなものです。
小規模から手堅くビジネスを始める
事業運営をギャンブルにしてしまわないための基本的な原則として、小規模から手堅くビジネスを始めるということが挙げられます。いきなり巨額の投資をするのではなく、失敗してもダメージが大きくなりすぎない程度の規模から徐々に拡大していくのがオススメです。
人件費や家賃などの固定費は抑える
固定費が増えると、起業間もない会社にとっては大きな負担になります。人件費や土地代・家賃といった固定費は出来る限り抑えるようにしましょう。
うまくいかなかった場合の対策を3つ以上用意しておく
廃業しないために重要なポイントとして、万が一事業計画どおりにビジネスが進まなかった場合の対処法を3つ以上用意しておくことが挙げられます。事業からの撤退という選択肢も含めて、最悪のケースにも備えられる対処策を複数用意しておくことが重要です。対処策が1つだけだと、もしその方法が失敗してしまった場合打つ手がなくなってしまいます。複数の対処策を用意しておけば、一つのプランを実行している間にさらなる打ち手を考える余裕が生まれるのでオススメです。
流行り廃りがない事業を選ぶ
新しいアイデアや独自のアイデアで大きく稼ぎたいという方も多いと思いますが、新しいアイデアや商品、サービスはいずれ飽きられる可能性があります。 情報を集めて必死にアイデアを出しても、その後継続的な事業展開にはさらに新たなアイデアが必要となり、何度も アイデアだけでヒットするというのは一般的には難しいものとなるでしょう。その点、流行り廃りが無い仕事。特に人と人との関わり合いの仕事や、介護や保育、冠婚葬祭など、人がいる限りは続いていくような仕事は継続的な事業がしやすいと考えられます。
事業を長く継続していくためには、一時の売上だけを追わずに、業種特有のリスクや過去の事例を調査しておくことが必要です。
事業計画を具体的に詰めていく
起業後すぐに廃業させないためには、事業計画を具体的に詰めていくことが大切です。この時、どんな商品を誰に対してどのように販売するかを明確にしていきましょう。商品の品質に自信があっても、その商品を誰に対してどのように売るかという部分が曖昧だと、起業に失敗しがちです。事業計画を可能な限り具体的に詰めていくことで、失敗してしまうリスクを減らしていきましょう。
起業した後の見込み客や販路を確保しておく
起業した最初の月から、見込み客が獲得できている状態が理想的です。起業を準備している段階から、見込み客を獲得できるようであれば事前に手を打っておきましょう。
また、起業した直後は忙しくなりますので、営業とサービス提供を両方同時に回せるだけの下準備も大切になります。起業する業種が現在の職業と一致している場合には、取引先の中で独立後に顧客になりうるクライアントもいるでしょう。そうした既存の人脈から販路を確保しておくことも大切になります。現在の勤務先と競合関係にならないように注意しつつ、可能な範囲で独立後の見込み客を獲得していきましょう。
インターネットやSNSで広告を配信することで、見込み客を獲得する方法も検討した方がいいでしょう。今の職業とは全く違う業種で起業する場合は、新たな見込み客を確保する必要があります。適切な販路拡大の方法を選択するため、起業準備の段階で有効そうなマーケティング手法についても勉強しておくのも有効です。
起業後の廃業リスクを下げる事業計画が大切
今回は起業から数年間での廃業率の統計データにもとづいて、廃業リスクを避けるための注意点もあわせて解説しました。これから起業しようと考えている人は、万が一ビジネスが失敗してしまった時の対処法まで含めて起業するようにしてください。
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