日本国内での起業への意識は、十数年前から一段と熱を上げてきているということが言えるでしょう。高度なインターネット社会で生きている中、質の高い起業アイデアや、その情報を提供する側の意識が、以前とは比べものにならないほどに高くなり、「起業」を支援する団体組織も営利的な運営をする程までの時代になりました。
そこで今回注目したいのは、日本国内での起業ではなく、海外での起業というスケールの大きなお話になります。海外へ進出するために、どんな活動が必要で、またどういった方法がご自身にフィットするかご参考とされてください。
海外で起業するための下準備を徹底する
皆さんは世界の先進国でどこの国が一番起業や開業に積極的で、どの国が起業に無関心だと思いますか?起業意識と活動の国際比較を行いための調査団体「Global Entrepreneurship Monitor(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)(GEM)」が実施した、2001年から2015年までの国別の起業総数が発表されています。
代表的な先進国で起業総数が一番高い順に、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツ、日本という順です。1位のイギリスが総人口に対して14.3%と非常に高く、日本は5.2%とイギリスの1/3ほどというリサーチ結果がでています。当然廃業率は上記の順序が逆になり、起業数が少ない分、日本は廃業数も少なくなるという事になります。
それでは、起業に対して無関心な国はどの国でしょうか。1位は日本。総人口の77.3%が起業に対して無関心という結果です。とても高い数値だと思いませんか?日本人はそこまで冒険をしない気質が特徴の民族という事が言えるでしょう。
海外で起業するためには、たくさんの下準備が必要になります。起業人口が低い日本人であっても、この下準備への徹底は、他の4カ国よりも総体的に高いというデータもあります。一気に飛び越えて起業するのではなく、入念な準備を怠らないのも日本人らしいと感じますね。
永住権や労働ビザについて
海外に移住して起業するためには、現地の永住権や労働用のビザが必要になります。国によって取得難易度がことなりますので、柱となるビジネスアイデアを元に、ビザ取得が比較的安易な国を選定するのが良いでしょう。因みに取得難易度が高い順は、ドイツ、オーストリア、スイス、アメリカ、そして日本の順になります。
法務上の申請、住居やレンタルオフィスやテナント申請について
現地で起業するためには法務局への申請が必要です。国によって法人税設定が異なりますので、実質税率や優遇される面など準備期間にリサーチしておきましょう。同時に申請には、現地で住む予定のご住所や電話番号、配偶者の有無など事細かく記載する必要がありますので、法務局のウエブサイトから雛形をダウンロードするなどご準備ください。
オフィスを構えるおつもりの方や飲食店や美容室などの店舗に入る計画の方は、保証人が必要になるケースがほとんどです。身内以外の他人で、永住権をもつ方のサインが必要になります。
環境や文化について
日本にも古来から受け継がれた文化・歴史・風俗があるように、諸外国にも独特の文化があります。ご自身の肌に合うかどうかも、一度旅行などを通して感じてみることをお勧めいたします。宗教、食事、エンターテイメントなども同時に調べておきましょう。
起業イメージとアイデアを大切に
現在お勤めの会社での業務の他に、海外で起業する際の商材や企画イメージを膨らませることも大切なファクターです。具体的には世界のどの国で、どんな街や人と接することで、ご自身のアイデアが発揮されるかという、下調べを経過した上でのイマジネーション能力を差します。
音楽と文化の街、イギリスのマンチェスターで日本の楽器(尺八・琴・三味線など)販売を試みて、副業として週末だけオープンする日本人の方と会う機会がありました。
とてもニッチな限定色が強いコンテンツだけに、週7日の営業にはリスクがあると感じていたと本音をおっしゃっていたことを思い出します。
とても賢い選択だったと思います。まずは生きていくための本業で成績をきちんと残し、週末の16時間だけ、日本文化芸術をPRする場として解放しながら楽器を販売する。デモンストレーションをする本人は正式な和装姿で対応し、お客様と会話を通して集客を増やしていくという、シンプルなアイデアとスキームを貫いていたようです。これは開店する前から描いていた本人なりの物語ですが、このように詳細に渡るより具体的な絵を描けるようにしましょう。
人間同士の理解が無いとビジネスは成立しません。 「良い製品・サービス」と持論を展開しても成り立たない場面が多くあります。現地の人々と情報や環境をギブアンドテイクで相互に受け取り会わないと仕事は成立しません。特に海外での起業は、前項に挙げた、日本の低い起業率の中でも、更に限られた人間でしか成し得ない事であるとお考えください。
アイデアは多数あっても、具体的に現地で通用するか解らないという人は、実際に現地を訪問して環境や生活感を体感してみてください。
下調べや準備期間では、理論的になり過ぎず、行動を重視して身体に調査結果を染み込ませることが大切です。
次項では、私の友人の経験を含めてより詳しく、国際的な起業人についてご説明します。
海外で活躍する国際的な起業人になる
アメリカに住んでいた時の私の友人が実際に起業した時の話をご紹介します。
当時私は、日本人の諸先輩が個人商店を開いていくのをで見ていました。日本のテイストを意識した「弁当屋」「お寿司屋」「定食屋」「ラーメン屋」など日本食に関わる事業が多かった中、一人だけ、現地アメリカ人を妻に持つ35歳の男性が、車のディーラーを辞めて、日本車専門の整備会社をはじめて大盛況したのを覚えています。
当時は日本車販売率が米国ディーラーを圧倒的に抜き去った時代で、修理やメンテナンスなど、日本人の技術者が必要であるという事実を知った彼は、半年も経たずに独立しました。繁盛の要因の一つには、日本人の、仕事に対して真面目な性格が現地では喜ばれたという側面もあります。
世界の経済状況や地元のトレンドやニーズを日々集約しながら、ご自身がフィットする立ち位置を見つける労力を惜しまずに実行することができる人ほど、積極的な現地の「人間」へのアプローチを忘れません。
海外で活躍する起業人になるには、ノウハウだけの集約では同業他社に立ち向かうことができません。当然センスや運営テクニックだけを知っていても、居座る席はございません。
人間的な魅力と、しっかりとした事業に対しての哲学を持ち合わせていれば、世界のどの国にいっても通用する人材に成り得るのです。
「海外で起業する心得」まとめ
一言で「海外で起業する」というと、とても漠然とした希望のように聞こえますが、下調べや現地リサーチなど、点として考えるのではなく、「起業人の生き方」という面で捉えることで、何が必要で誰に会うべきか、起業イメージや開業後の物語にブレは無いかをしっかりと吸収して行くことになります。
言語の問題、生活習慣の問題など、乗り越えていかなくては行けない壁は皆さんの想像以上だと思います。日本国内での起業や運営にもたくさんの壁がありますが、営利を目的とした賄いをするという意味では、どこにいても世界共通です。
最後に一言だけ申し上げるのであれば、「細かい分析や比較も大切ですが、その経験値をどのように活かすかを想像することが更に大切です」無駄な経験は一つとしてございません。海外で起業するために必要な知識と能力を、ご自身なりの物語に乗せて表現していきませんか?