「独立して念願の自分の美容室を構えたい!」
と思い立ったときに、美容師であるあなたが考えなければいけないことは山のようにあります。
考えなければいけないことの一例として
・ターゲットとする客層は誰か
・どんなサービスを提供するか
・どうやって集客するか
・いかにして他の美容室との差別化を図るか
などが挙げられます。
これらと密接に関わるのが、美容室を構える「場所」と「資金」です。
「場所」を選ぶことに失敗すれば、ターゲットとするお客様に来店してもらえず売上を伸ばすことができません。また、自分の理想の美容室にするために大切な内装や設備を準備したり、お客様にお店を知ってもらうための広告宣伝には「資金」が必要不可欠です。
この記事では、美容室開業に必要な「場所」の選び方と「資金」の調達方法のポイントを解説いたします。
また、場所選びや資金調達にも影響する、「のれん分け」「フランチャイズ」「業務提携(パートナーシップ)」での独立を目指すのがよいのか、自分自身で進めるべきかについても、それぞれのメリットとデメリットをあわせて解説いたします。
独立を目指す美容師の方は、ぜひ本稿をご一読ください。
店舗の場所選びでチェックすべき3つのポイント
美容室を出店する場所を選ぶとき、なによりも重要なのは「市場(マーケット)感覚」です。
具体的に着目すべきポイントは、大きく以下の3つに分けられます。
・ポイント1 人口や世帯別の年齢層
・ポイント2 アクセスのよさや交通量
・ポイント3 競合となる美容院の有無
これらのポイントをしっかり把握したうえで物件を選ぶことで、「思うように売り上げを伸ばすことができない」といった事態を避けることができます。
それぞれ詳しく解説いたします。
ポイント1 人口や世帯別の年齢層
出店する場所を探すときに、まず着目するべきポイントは「どれくらいの人口で、どんな年齢層で構成されている地域なのか」という点です。
たとえば、人口こそそこまで多くない地域であっても、ファミリー層が多ければ中期的に見て手堅く商売ができるエリアであると考えられます。
なぜなら子持ちの方が多い場合、学校に通わせるためにその地域に長く残ってくれることが期待できるからです。
同じ地域に根を張って生活している人が多いということは、継続して来店してくれるお客様になっていただける可能性が高いですよね。
逆に大学生が多いエリアでは、大学卒業のタイミングでその地域を離れてしまう可能性が高く、来店者数を増やしていくためには新規のお客様を増やすための広告宣伝が欠かせないでしょう。
このように出店する地域の人口や年齢層から、店舗経営の仮説を立てることができるのです。これは場所選びにおいて、とても重要な要素になります。
市区町村別の人口や世帯数、年齢層は総務省の統計資料で確認することができます。
ポイント2 アクセスのよさや交通量
言わずもがな、出店場所選びにおいてアクセスのよさやお店の周りの交通量はたいへん重要です。
駅や大型商業施設、大学の近くなど人通りが多い場所であれば、目に留まりやすく、期待できるお客様の数は大きく変わるでしょう。幹線道路沿いも駐車場を用意できれば集客しやすいかもしれません。このようにお客様の生活動線をイメージすることも、物件選びでは重要になります。
ただ、こうした交通量の多い場所は、その分物件の費用が高くなりがちです。家賃はお客様の数に関わらず払わなければなりませんから、集客がうまくいかないと経営が行き詰まってしまいます。
人通りが少ない場所でも、クーポンサイトやウェブ広告の活用で新規のお客様を集客できる場合もあります。
駅の乗降客数は都道府県や鉄道会社のホームページに掲載されているので、出店候補地の駅について確認してみるとよいでしょう。アクセスについては、実際に足を運び、目印となるものがあるかなどを確認したほうが確実です。
ポイント3 競合となる美容室の有無
もちろん、競合となる美容室の有無も欠かすことのできない要素です。
周辺に競合店がひしめき合う一等地では、あなたのサロンが生き残れるかの見通しが立ちにくいですよね。その反面、それだけ多くの美容室がそこに店を構えるということは、何かしら売り上げを支える要素があるはずです。
また、複数の美容室が共存できるということは、提供するサービスや料金ですみ分けをしているのかもしれません。
逆に競合店が少ない地域は、美容室の需要そのものがあまり期待できないのかもしれません。
このように競合店の有無という切り口から、あなたのお店の将来的な伸びしろを推測することができます。
また、意外なお店が競合になることも珍しくはありません。
昔ながらの理髪店しかないからと意気込んで店を出したところ、地元の方には受け入れられずに撤退を余儀なくされたというケースすらあります。
このように出店エリアを選定するときの競合調査は、あなたが考えているよりも入念におこなわなければなりません。
美容室の開業に使える4つの融資制度と活用のポイント
美容室の開業にはいくら必要?
美容院の開業にはどのくらいの費用が必要なのでしょうか。働きながら資金を貯めるにしても、融資を受けるにしても、目安を知っておくことで計画が立てやすくなります。
開業費用には、物件にかかる費用(敷金・家賃)のほか、内外装の工事費、機械・什器・備品費が含まれます。また、開業に直接必要な費用だけでなく、数か月分の運転資金や自分の生活費も準備しておく必要があります。開業直後から月々の売上で経費を賄い、利益が出るとは限らないからです。
日本政策金融公庫の調査では、サロンの平均開設費用は約940万円。地域によって幅があるので800万円~1500万円くらいは見積もっておきましょう。
開業資金を全額自己資金で用意できればよいですが、1000万円もの資金を自己資金で用意するのは現実的にはなかなか難しいでしょう。そこで、美容院の開業に利用できる融資制度についてご紹介します。
新創業融資制度
新創業融資制度は、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫が取り扱っている創業者(これから事業を始める人、または税務申告を2期終えていない人)向け融資です。
無担保・無保証人で融資を受けることができるのが特徴で、融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)です。
生活衛生新企業育成資金
生活衛生新企業育成資金は、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫が取り扱っている、新たに美容業などの生活衛生事業の創業者(これから事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人)を対象とした融資です。
生活衛生事業者のための特例貸付で、融資限度額は、生活衛生同業組合に加入した人は、設備資金1億5,000万円、運転資金5,700万円、それ以外の人(※)は設備資金7,200万円です。
※女性、35歳未満または55歳以上の人または雇用の創出や勤務経験等、一定の要件に該当する人が対象
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫が取り扱っている、女性、35歳未満の若年者および55歳以上の高齢者の創業者(これから事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人)を支援する融資です。美容院を開業したいと考える美容師には女性や35歳未満の方が多いでしょうし、利用しやすい制度でしょう。
通常の融資と比較して、貸付利率が優遇されているのが特徴で、融資限度額は、短期資金が7,200万円(うち運転資金4,800万円)、長期資金が7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)です。
地方自治体が実施している創業支援
上記のほか、地方自治体と商工会議所などが連携して創業支援を行っていることがあり、融資や信用保証をしてくれます。支援の内容や支援を受けるための条件は様々なので、開業予定の都道府県や市区町村のホームページを確認してみてください。
融資制度活用のポイント
これまで紹介した4つの融資制度は、民間の金融機関の融資に比べればハードルが低いといわれていますが、それでも注意すべきポイントがあります。
事業計画書の作成が必要
融資を受けるためには事業計画書(創業計画書)や収支計画書を作成する必要があります。開業にあたってサービス内容やターゲットについては考えているとは思いますが、それを文書にまとめることは意外と難しいものです。日本政策金融公庫の記入例を参考にしたり、資金調達支援コンサルを受けるなどして準備しましょう。
ある程度の自己資金は必要
融資を受けるにしても、自己資金(事業に使用する予定の資金)がゼロでは融資してもらえません。最低でも融資を受ける金額の10%、できれば30%程度の自己資金を用意しておきましょう。
「のれん分け」や「フランチャイズ」、「業務提携」で独立開業する
のれん分けは、飲食店から美容院まで比較的幅広い業種で採用されているビジネスモデルのことです。
美容師として勤めていたサロンと契約し、新規店舗のオーナーとして独立します。
フランチャイズは、のれん分けと似ていますが、フランチャイザー(本部)と契約して、新規店舗のオーナーとして独立するものです。
一般的な独立開業と異なるのは、お店の商標や運営や経営のノウハウ、サロンで使う商品や薬剤などの仕入れを共有してもらいながら開業できる点。
物件情報を提供してもらえたり、資金調達のサポートをしてもらえることもあります。
開業直後に直面しがちな集客や経費の問題をクリアしやすく、堅実なスタートダッシュを切れることがのれん分けやフランチャイズを利用するメリットといえます。
他方で、店舗のコンセプトや扱う商材は決まっていることが多いので、勤務美容師とあまり変わらないと感じるかもしれません。契約に基づいて月々一定の金額を支払わなければならないようなケースでは、その支払いが負担となることもあるかもしれません。
のれん分けやフランチャイズと少し異なる開業方法として、業務提携(パートナーシップ)があります。資金調達と運営のサポートをしてくれるパートナーと業務提携し、サロンを開業します。のれん分けやフランチャイズに比べると開業する美容師の自由度が高いのが特徴ですが、売上を分配する必要があるのは、のれん分けやフランチャイズと同様です。
どの方法も美容院の開業にとって重要な場所や資金の点で、1人で独立する場合と比較してメリットが大きいですが、良くも悪くも他人と関わることになるので、トラブルにならないように契約などでしっかり取り決めておく必要があります。
【まとめ】美容室の独立開業ではまず「場所」と「資金」の準備をしましょう!
最後にここまでの内容を振り返りましょう。
独立して美容室を開業するときに、重要なのは「場所」と「資金」です。これらの準備を疎かにしては、独立を成功させることはなかなか難しいでしょう。
独立して店をオープンさせるまでの道のりはとても地道なものです。しかし、その地道な道のりこそが独立開業を成功させるための第一歩です。あなたが目指す理想の美容院を作るため、今回の記事を参考に「場所」と「資金」を準備し、ぜひ繁盛する美容院をつくってくださいね。
お客様にあなたのサロンを知ってもらい足を運んでもらうためには、出店地域や店舗物件の選定と同じくらい、「ホームページからの集客」が大切です。
こちらの「独立開業時にホームページは必要?自作・依頼どちらが良い?」という記事では、ウェブに詳しくない方でもわかりやすくホームページの必要性について解説していますのでご一読ください。
またこちらの記事ではオープン前の「挨拶」について詳しく解説しています。「挨拶状や挨拶回りなど独立開業の前に!正しい挨拶状のイロハ」。オープン前の挨拶回りや挨拶状も大切なマナーですよね。こちらもご一読ください。