事業を発展させる手法として利用されることが多い多角化戦略。安易に飛びつくことで思わぬ損害を被ることもあります。そこで今回は、多角化戦略の分類や具体例、メリット・デメリットをご紹介します。
事業を発展させる多角化戦略。メリット・デメリットから具体例まで
多角化戦略とは?
多角化戦略とは、自社がこれまで戦ってきた市場とは別の市場に新製品を投入することで事業を発展させようとする戦略です。
多角化戦略とともに語られることが多いのが、ロシア系アメリカ人の経営学者であるイゴール・アンゾフが提唱した「アンゾフのマトリクス」です。「アンゾフのマトリクス」では、市場と投入する商品(サービス)の2軸を使って成長戦略を
①既存市場に既存商品(サービス)を投入する「市場浸透」
②既存市場に新商品(サービス)を投入する「製品開発」
③新市場に既存商品(サービス)を投入する「市場開拓」
④新市場に新製品(サービス)を投入する「多角化」
の4つに分類します。
後ほど詳しく説明しますが、新市場に新製品を投入することから、リスクは大きいですが、うまくいけば大きな成長が見込めるハイリスク・ハイリターンの戦略といえます。
多角化戦略の分類と具体例
多角化戦略といっても、その具体的な内容は様々です。ここでは2つの分類方法をご紹介しつつ、具体例についても説明します。
多角化に対する企業の対応に着目した分類
専業戦略
多角化戦略を採用せず、本業に専念する対応です。大企業で本業のみというところは少ないといえますが、トヨタ自動車は専業戦略の代表例としてよく取り上げられます。
本業中心多角化戦略
本業と呼べるような事業がありつつ、多少の多角化を行う対応です。例えば、サンスターはオーラルケアが本業といえますが、ヘアケア分野にも事業展開しています。
関連分野多角化戦略
技術や市場で関連のある分野に対して、多角化を行う対応です。例えば、ホンダはオートバイの製造から出発し、その技術を活かして自動車、さらにエンジンの製造技術を活かして芝刈り機などの農業機械事業や航空機事業へと多角化を進めています。
非関連多角化戦略
技術や市場に関連性がない分野に対して、多角化を行う対応です。この形態の多角化が高度に進んだ例がコングロマリットと呼ばれる巨大企業です。ソニーは電機メーカーとしてスタートしましたが、現在ではカメラ、ゲーム、映画、音楽、金融など様々な市場に展開しています。
技術や市場との関連性の有無を基準とした分類
水平型多角化戦略
既存技術と関連性が高い新商品(サービス)を既存と類似した市場に投入する戦略です。先ほども紹介したホンダの例は水平型多角化戦略の典型例といえます。
垂直型多角化戦略
既存技術と関連性が低い新商品(サービス)を既存と類似した市場(川上・川下)に投入する戦略です。パソコンの製造を行っていたメーカーが、ネット通販をスタートし、販売も手掛けるようになった例が典型例です。
集中型多角化戦略
既存技術と関連性が高い新商品(サービス)を既存と異なる市場に投入する戦略です。カメラの技術を転用し、コピー機の市場に参入したキヤノンなどがその例といえます。
集成型多角化戦略
既存技術と関連性が低い新商品(サービス)を既存と異なる市場に投入する戦略。セブンイレブンやイオンといった小売業が金融業に参入するのは、集成型多角化戦略の例といえます。この戦略を採用する場合、参入する市場に関するノウハウが自社にないことから、既にその市場に参入している他社を買収して参入することが多いです。
多角化戦略のメリット・デメリット
次に、多角化戦略のメリットとデメリットを確認していきましょう。
多角化戦略のメリット
収益が拡大する
成熟した市場では新商品を投入しても収益拡大への影響は限定的になります。限られたパイを奪い合うことになるため、シェアの維持のために多額の販促費をかけなければならないケースも出てくるでしょう。そうしたときに、別の市場に参入することで、収益の拡大が期待できます。
経営が安定する
多角化することで、仮に1つの事業が不振に陥っても、他の事業でカバーすることができることから、経営が安定しやすいといえます。
経営資源の有効活用・コストの削減
スキー場を例に考えてみましょう。国内の屋外スキー場は、雪が溶けてしまうため、夏場は営業することができません。つまり、スキー場事業だけでは、夏場は敷地も従業員も有効活用できないのです。夏場はスキー場をキャンプ場にしたり、マウンテンバイクのコースにしたりすることで、経営資源を有効活用することができます。
ここまで極端な例でなくても、総務や経理の業務には共通部分があるため、事業が2つ、3つと増えたからといって、業務が単純に2倍、3倍になるというわけではありません。つまり、事業を多角化することで、コストを削減することができるのです。
多角化戦略のデメリット
立ち上げにコストがかかる
新しい市場に新しい商品・サービスを投入するため、立ち上げにコストがかかります。また、経営資源を分散することになるため、本業に影響を及ぼす可能性もあります。フランチャイズの利用や他社の買収なども検討しましょう。経営の多角化を対象とした補助金や融資制度もあるので、探してみるとよいでしょう。
経営効率が悪化しがち
相乗効果が見込みにくい非関連多角化戦略を採用した場合、コスト削減の効果も限定的となるため、経営効率が悪くなりがちです。
多角化を推進してきたゼネラル・エレクトリック社が「選択と集中」を掲げて不採算部門を売却・撤退することで経営を改善した事例は、多角化戦略のデメリットと回復例として有名です。
ブランドの統一による悪影響
様々な事業を展開することで、顧客にとって何の会社かわからなくなったり、ある事業の不祥事が他の事業に悪影響を与えるなど、ブランドを統一したことによるデメリットが生じる可能性があります。影響を避けるために、ブランドを分けることも検討しましょう。
まとめ
今回は、多角化戦略の分類、メリット・デメリットについて説明しました。事業を多角化することで、リスクを減らしつつ、収益拡大が期待できますが、失敗すると莫大な損失が発生する可能性もあります。
損失のリスクを避けるためには、自社の既存技術か既存市場と関連性の高い分野に参入し、相乗効果が期待できる多角化を図るべきでしょう。やむを得ず関連性が低い事業に参入する場合は、フランチャイズによるノウハウの獲得なども検討しましょう。
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