独立開業時に必ず必要になる事業資金ですが、自分で用意した貯金以外にも活用できるお金があります。それは、補助金や助成金と呼ばれる起業支援のための資金です。今回は、国や地方自治体、民間企業が用意する経済的なサポートを活用する方法についてまとめてご紹介します。
【2021年7月更新】独立開業に役立つ補助金・助成金制度についてメリットや注意点を解説
目次
独立開業資金をサポートしてもらえる補助金・助成金制度とは?
まずは、補助金や助成金と呼ばれる制度はどのようなものなのか、確認していきましょう。補助金や助成金などの金銭面でのサポートは、独立開業時だけでなく、会社設立後の事業拡大にも活用することが可能です。また、個人事業主の創業資金としても活用できます。
国や地方自治体が起業支援のための補助金を用意している
事業者や経営者のために補助金や助成金を用意している団体は、国や地方自治体、民間企業といった組織です。日本で活躍する起業家を増やして産業を豊かにすることで、国内の市場全体を活性化させる目的があります。
独立開業時に受けられる資金面でのサポートの中には、返済が不要なものもあるのが特徴です。申請した用途でお金を使えば、返済する必要がないため、少ないリスクで事業拡大をすることができます。中には、返済期限が決まっているタイプの基金もあるため、利用する際には応募条件をきちんと確認するようにしましょう。
補助金や助成金、金融機関からの融資の違い
ビジネスを支援するための仕組みとして知られる補助金・助成金や金融機関からの融資ですが、これらにはいくつかの違いがあります。まず、補助金と助成金は両方とも返済が不要ですが、金融機関から融資を受ける場合には利息を含めて返済が必要です。
補助金と助成金は、よく似た制度ですが異なる部分もあります。
補助金は一般に交付申請→交付決定→補助事業遂行→実績報告→交付額の決定・支払という流れになります。先に補助金をどのように使うか計画を立てたうえで、審査を受け、交付決定を受けた後で、計画通りに事業を行い、報告をしないと実際に補助金を受け取ることができないのです。
支援する側が計画段階から関与するので、補助金の対象は新規事業の創業や事業拡大のための設備投資など、まとまった資金を要するものが多くなっています。
これに対して、助成金は支給条件を満たせば受け取ることができます(一部、事前に計画書を提出する必要がある助成金もあります)。
助成金の多くは厚生労働省の管轄で、雇用や職場環境の改善をサポートすることを目的としています。募集期間が決まっていることが多い補助金と異なり、いつでも申請することができますが、支給条件が変更されたり、予算がなくなってしまうと早期に終了してしまうこともあるので、こまめにチェックしておきましょう。
独立開業時に申込条件を満たしている補助金があるか要チェック
独立開業時の資金サポートとして利用できる補助金ですが、申込には一定の条件が設けられています。条件をクリアしていないと応募できないことと、申込条件をクリアしていたとしても、その後の審査に通らなければ支援を受けられないことに注意してください。
また、補助金は募集期間が決まっているものが多く、加えて頻繁に制度が変更されます。情報収集が重要になります。
独立開業時に補助金・助成金を活用するメリットおよび注意点
独立開業時に補助金・助成金を活用する場合には、メリットだけでなく注意点もあります。また、補助金を受け取るためには事業計画に関する書類や申し込み書類を用意する必要があるため、きちんと準備をしておくことも大切です。
補助金を使えば独立開業後にスムーズな事業拡大が可能
独立開業時に補助金によるサポートを受ける最大のメリットは、スムーズに事業拡大を進められることです。事業に必要な設備投資や販促費、技術開発費といった資金が多くできるほど、短期間でビジネスを大きくしていくことができます。
特に、製造業や店舗ビジネスなどの業種では初期費用が多くかかるため、自己資金だけですべてをまかなうのは現実的ではありません。小規模から初めてビジネスを拡大していくか、独立開業に際して利用できる補助金を使って事業拡大を加速させるかの意思決定が必要です。
自己資金がゼロだと助成金・補助金を活用できないため注意
独立開業に必要なお金をサポートしてもらえる補助金・助成金制度ですが、自己資金が全くない場合には利用が難しいためご注意ください。貯金などの自己資本が全くない状態で補助金・助成金を活用するのが難しい理由は主に2つです。
1つ目は、補助金・助成金は後払いとなっていることが挙げられます。先に必要な支出を自己資本から支払った上で、後からお金が返ってくるのが、補助金・助成金のシステムです。
2つ目は、補助金や助成金は事業にかかる経費の内、何割かを負担してもらえるという仕組みとなっています。自己負担部分が必ずあるのです。
そのため、元手が全く用意できない場合には、補助金・助成金を活用することができないのです。
できるだけ初期コストを掛けずに起業するのがおすすめ
起業時に補助金を利用する際にはメリットだけでなくデメリットもあるため、できる限り初期コストを掛けずに起業することをおすすめします。製造業や飲食業など、創業時に多額の初期投資が必要なビジネスは、もしも失敗してしまった場合に受けるダメージも大きくなるからです。
最近では、初期費用をほとんどかけずに起業できるような業種や業態も増えてきています。プログラミングやコンサルティングといった個人の技量を活かして独立するビジネスや、資格や設備がなくても始められる結婚相談所ビジネスなどがおすすめです。
独立開業のために活用できる補助金・助成金の調べ方
次に、起業のために活用できる各種補助金・助成金の調べ方についてご紹介します。補助金・助成金を用意している団体によって申込条件や申請方法が異なるため、活用できる補助金がどれなのかをきちんと調べておくことが大切です。
ミラサポplus
ミラサポplusは、中小企業庁が運営している中小企業・小規模事業者・個人事業主向け支援制度の情報を提供しているサイトです。
jGrants(Jグランツ)
jGrants(Jグランツ)は経済産業省が運営する補助金の電子申請システムです。申請だけでなく、補助金・助成金の検索もできます。
雇用関係助成金検索ツール
雇用関係助成金検索ツールは、厚生労働省が運営する助成金の検索ツールです。取組内容や対象者から助成金を検索することができます。
支援情報ヘッドライン
支援情報ヘッドラインは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているサイトで、国の補助金・助成金だけでなく地方公共団体の補助金・助成金の情報も検索することができます。
東京や大阪などの補助金・助成金制度はポータルサイトで調べられる
東京や大阪といった都市部では起業する人の数も多いため、補助金や助成金のシステムが充実しています。東京都や大阪府が開設している起業者向けポータルサイトにアクセスすれば、補助金や助成金に関する情報や募集中の補助金一覧を調べることが可能です。
東京都が用意している起業支援のための情報は、東京都創業NETというポータルサイトで確認できます。補助金・助成金の情報は、「資金調達」のメニューから調べることができます。東京都では創業助成金や東京都中小企業制度融資といったシステムを活用することが可能です。
大阪府や大阪府内の市町村が用意している起業支援のための情報は、オール大阪起業家支援プロジェクトというポータルサイトで確認できます。補助金・助成金の情報は「起業支援情報」のメニューから調べることができます。資金調達に役立つ情報だけでなく、ビジネスコンテストや起業家のためのセミナー、イベント情報もまとまっているのが特徴です。
民間企業による補助金や助成金は募集開始をネットでチェック
地方自治体が用意している補助金や助成金の制度以外に、民間企業が用意している各種サポートも最近では増えてきています。三菱グループやソフトバンクグループなどの大企業が、新たなビジネスプランを持った社長を支援するための財団を用意しているのが有名です。
民間企業による補助金や助成金は、募集開始のタイミングや募集期間がそれぞれ異なります。そのため、各グループが公開している起業支援情報をネットでチェックして、応募できそうなものに関する情報を集めておくのがおすすめです。
税理士や中小企業診断士のサポートを受けるのも効果的
自分の力だけで起業時の補助金情報を集めるのが難しいと感じる場合には、税理士や中小企業診断士といったプロのサポートを受けるのも役立ちます。起業時の資金調達に強いプロフェッショナルの力を借りることで、スムーズな事業拡大が可能です。労働者の雇用を拡大したり、設備投資をする場合の資金調達は専門家への依頼もご検討ください。
独立開業時におすすめの補助金・助成金6選
最後に、独立開業時におすすめの補助金・助成金をご紹介します。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者を対象とした補助金で、策定した経営計画に基づいて実施される販路開拓等の取り組みに対して、使用した経費の3分の2について最大50万円まで補助を受けることができます。起業したのが2020年1月1日以降の場合は、補助上限額が100万円に引き上げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継に伴い経営者が交代するケースだけでなく、廃業を予定している者から経営資源を引き継いで創業したケースも対象となる補助金で、事業承継・引継ぎを契機とした経営革新のための取り組み等に対して、使用した経費の3分の2について最大400万円まで補助を受けることができます。詳しくはこちらをご覧ください。
ものづくり補助金
一般に「ものづくり補助金」として知られている補助金ですが、現在は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と名称が変更されており、製造業以外の商業・サービス業でも利用することができます。使用した経費の2分の1(低感染リスク型ビジネス枠・小規模事業者は3分の2)について最大1000万円まで補助を受けることができます(一般型の場合)。詳しくはこちらをご覧ください。
IT導入補助金
中小企業が生産性向上や業務効率向上のためにITツールを導入するときに利用できる補助金で、通常枠(A・B類型)の場合は費用の2分の1について最大450万円まで補助を受けることができます。新型コロナ対策として実施される低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)の場合は費用の3分の2について最大450万円まで補助を受けることができます。詳しくはこちらをご覧ください。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
パート・アルバイトや派遣社員を正社員に転換したとき等に支給される助成金で、最大で1人当たり108万円を受け取ることができます。この助成金は毎年のように支給条件や支給額が変更され、過去には年度の途中で予算に達して申請の受付を終了してしまったこともあります。こちらから必ず最新の情報を確認するようにしてください。
中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)
40歳以上の人が起業し、従業員を一定数雇い入れると支給される助成金で、採用や研修にかかった費用の2分の1(60歳以上の起業者の場合は3分の2)を最大150万円(60歳以上の起業者の場合は200万円)まで受け取ることができます。詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ 独立開業時の資金調達に補助金・助成金制度を活用しましょう
今回は、独立開業時の資金調達に役立つ補助金制度についてご紹介しました。今後、自分自身で会社を設立して独立開業しようと考えている方は、利用できそうな補助金・助成金制度があるかどうかぜひ確認してみてください。