独立して会社を設立し、事業を運用していく中で、大事なものと言えば「ひと」「もの」「かね」です。
そして、今の時代、ひと・もの・かねだけではなく、情報が必要であると言われています。
人は会社の財産であり、ものは資産となります。それらを活用していくためには会社として地盤がしっかりしていなければいけませんが、会社の体力ともいえる「かね」がその地盤と言っても過言ではないでしょう。
地盤をしっかり固めるためにも、かねを自己資金や資本金、銀行からの借り入れだけに頼らず、国や地方自治体が実施している補助金や助成金を活用することで、安定した会社運営を行うことが出来るでしょう。
ここでは、補助金や助成金の活用について詳しくご紹介していきます。
独立開業資金をサポートする補助金・助成金制度とは?
補助金・助成金とは国が推進する事業や方針に対して、給付金を提供する制度を指します。事業者や経営者のために補助金・助成金を用意している団体は、国や地方自治体、民間企業といった組織です。
日本で活躍する起業家を増やして産業を豊かにすることで、国内の市場全体を活性化させる目的です。申請した用途でお金を使えば、返済する必要がない物が多いため、少ないリスクで事業拡大をすることができます。
補助金・助成金などの金銭面でのサポートは、独立開業時だけでなく、会社設立後の事業拡大にも活用することが可能です。また、個人事業主の創業資金としても活用できます。厚生労働省のホームページなどで詳細をご確認ください。
事業主のための雇用関係助成金(厚生労働省)公式
補助金・助成金と金融機関からの融資の違い
ビジネスを支援するための仕組みとして知られる補助金・助成金と金融機関からの融資ですが、これらには違いがあります。補助金・助成金は両方とも返済が不要ですが、借入やローンなど、金融機関から融資を受ける場合には利息を含めて返済が必要です。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金は、よく似た制度ですが異なる部分もあります。
補助金は一般に交付申請→交付決定→補助事業遂行→実績報告→交付額の決定・支払という流れになります。先に補助金をどのように使うか計画を立てたうえで、審査を受け、交付決定を受けた後で、計画通りに事業を行い、報告をしないと実際に補助金を受け取ることができないのです。
支援する側が計画段階から関与するので、補助金の対象は新規事業の創業や事業拡大のための設備投資など、まとまった資金を要するものが多くなっています。これに対して、助成金は支給条件を満たせば受け取ることができます(一部、事前に計画書を提出する必要がある助成金もあります)。
助成金の多くは厚生労働省の管轄で、雇用や職場環境の改善をサポートすることを目的としています。募集期間が決まっていることが多い補助金と異なり、いつでも申請することができますが、支給条件が変更されたり、予算がなくなってしまうと早期に終了してしまうこともあるので、こまめにチェックしておきましょう。
独立開業時に使える補助金・助成金一覧
補助金や助成金は世の中に沢山あり、起業時や起業後に利用できます。
社労士を顧問契約されている場合、助成金や補助金について詳しく教えてくれることもあります。また、既に社長をやられているなら社長同士の集まりや会合などで話を聞くこともあるでしょう。
しかし、まさにこれから起業しようとしている方や、そうしたつながりを持っていない方であれば、自ら調べて補助金や助成金の制度や申請方法などの情報を取りに行く必要があります。
主な補助金・助成金としては、以下のようなものがあります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援するもので、投資額の2分の1から3分の2(最大1,000万円)が補助されます。
IT導入補助金
IT導入補助金は、全国の中小企業が対象となっている補助金です。生産性向上や業務効率向上のためにITツールを導入するときに、その導入経費の一部を補助してくれるものです。詳しくはこちらをご覧ください。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、厚生労働省から出されている助成金です。非正規雇用の労働者を正社員に転換するとき等に支給されます。起業した後、利用すると良いでしょう。この助成金は毎年のように支給条件や支給額が変更され、過去には年度の途中で予算に達して申請の受付を終了してしまったこともあります。こちらから必ず最新の情報を確認してください。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、正社員の教育や非正規雇用の労働者の教育などに対して出る助成金で、Off-JTを行った場合に掛かった費用の一部または全額を助成してくれるものとなっています。IT企業がプログラミングを学ばせるなど教育に対しておりる助成金です。起業した後、利用すると良いでしょう。
業務改善助成金
業務改善助成金は、全国の中小企業が使える助成金で、企業の業務生産性を向上するために必要な経費を一部助成してくれるという制度です。起業した後、利用すると良いでしょう。
先進的防災技術実用化支援事業
東京都内のみの利用と制限されている補助金ですが、防災技術向上や実用化するまでの経費の一部を補助してくれるものです。
事業承継補助金
事業承継補助金は、既に運用されている事業を承継する際に必要な経費を一部補助してくれるもので、全国の中小企業が利用できます。事業承継に伴い経営者が交代するケースだけでなく、廃業を予定している者から経営資源を引き継いで創業したケースも対象です。
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金は、全国で利用できる助成金で、人が少ない地域の人材を雇用することにより、支給される助成金で、過疎地域となっている地域に事務所を設置する必要があります。起業した後、利用すると良いでしょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、事業者が地元商工会・商工会議所の支援を受けて経営計画を作成し、計画通りに取り組む開発・開拓等の経費を一部補助する制度です(50万円〜500万円が目安)。詳しくはこちらをご覧ください。
トライアル雇用助成金
職業経験・技能・知識等から安定的な就職が困難な求職者について、一定期間試験的に雇用した場合の助成金です。企業が全ての負担を負うのではなく、国が一部を雇用へ負担してくれるので、トライアルという期限付きが特徴です。
特定求職者雇用開発助成金
高齢者、シングルマザーなど就職困難者を雇用するする事業主に対して支給される助成金です。
中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛け金助成及び掛け金月額変更掛け金制度
厚生労働省の掛け金を増額する事業主に対する国の制度です。中退共に加入すると、助成を受けることができます。
このように国や自治体の補助金や助成金は沢山あり、それぞれの条件を満たすことで支給されます。
独立開業のために活用できる補助金・助成金の調べ方
次に、起業のために活用できる各種補助金・助成金の調べ方についてご紹介します。補助金・助成金を用意している団体によって申込条件や申請方法が異なるため、活用できる補助金がどれなのかをきちんと調べておくことが大切です。
ミラサポplus
ミラサポplusは、中小企業庁が運営している中小企業・小規模事業者・個人事業主向け支援制度の情報を提供しているサイトです。
jGrants(Jグランツ)
jGrants(Jグランツ)は経済産業省が運営する補助金の電子申請システムです。申請だけでなく、補助金・助成金の検索もできます。
雇用関係助成金検索ツール
雇用関係助成金検索ツールは、厚生労働省が運営する助成金の検索ツールです。取組内容や対象者から助成金を検索することができます。
支援情報ヘッドライン
支援情報ヘッドラインは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているサイトで、国の補助金・助成金だけでなく地方公共団体の補助金・助成金の情報も検索することができます。
各自治体の起業者向けポータルサイト
東京や大阪といった都市部では起業する人の数も多いため、補助金・助成金のシステムが充実しています。東京都や大阪府が開設している起業者向けポータルサイトにアクセスすれば、補助金や助成金に関する情報や募集中の補助金一覧を調べることが可能です。
東京都が用意している起業支援のための情報は、東京都創業NETというポータルサイトで確認できます。補助金・助成金の情報は、「資金調達」のメニューから調べることができます。東京都では創業助成金や東京都中小企業制度融資といったシステムを活用することが可能です。
大阪府や大阪府内の市町村が用意している起業支援のための情報は、オール大阪起業家支援プロジェクトというポータルサイトで確認できます。補助金・助成金の情報は「起業支援情報」のメニューから調べることができます。資金調達に役立つ情報だけでなく、ビジネスコンテストや起業家のためのセミナー、イベント情報もまとまっているのが特徴です。
起業支援を行う民間企業のWebサイト
自治体が用意している補助金・助成金の制度以外に、民間企業が用意している各種サポートも最近では増えてきています。三菱グループやソフトバンクグループなどの大企業が、新たなビジネスプランを持った社長を支援するための財団を用意しているのが有名です。民間企業による補助金・助成金は、募集開始のタイミングや募集期間がそれぞれ異なります。そのため、各グループが公開している起業支援情報をネットでチェックして、応募できそうなものに関する情報を集めておくのがおすすめです。
税理士や中小企業診断士のサポート
自分の力だけで起業時の補助金・助成金の情報を集めるのが難しいと感じる場合には、税理士や中小企業診断士といったプロのサポートを受けるのも役立ちます。起業時の資金調達に強いプロフェッショナルの力を借りることで、スムーズな事業拡大が可能です。労働者の雇用を拡大したり、設備投資をする場合の資金調達は専門家への依頼もご検討ください。
補助金・助成金の申請方法
それでは具体的な助成金の申請方法はどういうスキームで行われるのでしょうか。上記の通り助成金についての全体概要を把握したという事を前提でお話致します。
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<助成金の申請方法>
①申請したい助成金について深く理解する
②申請する
募集申請用のフォームはウエブサイトからダウンロードする形式が増えています。必要な事項に記入して申請書を事務局へ提出します。
③決定する
選定結果を受け取り助成金が交付されることになると、交付申請書を事務局に提出します。
④交付決定通知を受け取り事業を開始します
⑤事業の実績や実施状況確認
交付決定を受けて申請した内容の事業をスタートさせます。その際は運営途中でも実務状況について関係機関からのチェックを受けて、健全に運用されているか確認されます。
⑥助成金交付
実際に掛かった費用や明細などの経費を報告します。きちんと実施されていたことが確認されると助成を受けられる金額が確定し助成金を受け取ることができます。
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上記①~⑥が一般的な助成金申請から助成金授与までの流れです。申請項目や人気度によって半年から1年ほど受理(確定)まで掛かる場合がありますので、起業と同時の助成を期待されるよりは、1年越しで計画することが良いかもしれませんね。
助成金支給まで1年も待てないという事業者の多くは、国民政策金融公庫へ相談にいくケースが多いです。国の税金で賄われる公庫の融資は比較的、初回融資へのハードルも低く、独立開業の際から運転資金の不安がある方にはお勧めです。その際もしっかりとした現実味がある事業計画書を持参して担当者へ説得できる返済プランをご説明下さい。
<検査機関や厚生労働省側が採択する際の重要な4つのポイント>
①事業の独創性
独創的であり且つ新たな商品やサービス・商品であること
②事業の実現可能性
コンセプトがしっかりとしていて人員の確保の必要性が明確であること
③事業の収益性
販路やターゲットが明確で売上見通しに妥当性と信頼性があること
④事業の継続性
実施スケジュールが明確でリスク等に適切に対応できること
採択をする機関としては斬新な事業計画であったり独創性を認めることがあったとしても、実現可能性の方が大切ではないかと思います。事業に対しての熱意があり、本当に成功しそうなものには補助金が受給されるケースが多いと感じています。
補助金や助成金を使うメリットデメリット
補助金や助成金を使うためにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
メリットについては、補助金や助成金が入ることで、会社の運転資金が増えるため安定的な会社運用ができるという点でしょう。特に、製造業や店舗ビジネスなどの業種では初期費用が多くかかるため、自己資金だけですべてをまかなうのは現実的ではありません。補助金や助成金を活用することで、より短期間で事業を拡大することができます。
では、デメリットはどのようなものがあるでしょうか。
デメリットとしては、助成金や補助金を申請するためには様々な書類が必要となり、手続きにも時間が掛かります。そのため、申請するまでには必要なかった業務が発生し、業務を圧迫する可能性もあります。
しかし、それらの時間よりも補助金や助成金が出た方がメリットになるという企業は多いでしょう。
補助金・助成金を使う時の注意点
補助金・助成金を利用するにあたり、「不正は行わない」「タイミングを間違えない」「自己資金はある程度用意する」と注意が必要な部分があります。
不正は行わないことは勿論ですが、意図的ではなく不正受給になってしまうこともありますので、助成金・補助金を利用する際は、社労士などと相談すると良いでしょう。
また、タイミングによってはすぐに申請期間が終わってしまうものや、先に申請しなければいけないものなど多数ありますので、例えば研修などを実施してから申請しても通らないものがあります。注意して、利用してください。
最後に、自己資金が全くない場合には利用が難しいためご注意ください。
理由は主に2つです。1つ目は、補助金・助成金は後払いとなっていることが挙げられます。先に必要な支出を自己資本から支払った上で、後からお金が返ってくるのが、補助金・助成金のシステムです。
2つ目は、補助金・助成金は事業にかかる経費の内、何割かを負担してもらえるという仕組みのため、自己負担が必ずあるからです。
そのため、元手が全く用意できない場合には、補助金・助成金を活用することができません。
補助金・助成金を活用しつつ、初期コストをかけない起業がおすすめ
ここまで、補助金や助成金のご紹介や注意点などをお伝えしてきましたが、起業する時や起業した後も使えるものが沢山あります。ただし、起業時に補助金・助成金を利用する際にはメリットだけでなくデメリットもあるため、できる限り初期コストを掛けずに起業することをおすすめします。製造業や飲食業など、創業時に多額の初期投資が必要なビジネスは、もしも失敗してしまった場合に受けるダメージも大きくなるからです。
最近では、初期費用をほとんどかけずに起業できるような業種や業態も増えてきています。プログラミングやコンサルティングといった個人の技量を活かして独立するビジネスや、資格や設備がなくても始められる結婚相談所ビジネスなどがおすすめです。
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